7/1
*落ちる落ちる梛の木の実が風に煽られ
青緑小さな粒が歩道に跳ねる
7/9
*犬を連れ夜風に吹かれ石のベンチに
横たはる宇宙の底と思ひたりけり
7/24
*垂直の真上に光る星ありて我は真下に仰臥しにけり
*仰臥する真上に光る星ありて垂直線をまざまざと見る
7/26
*雷が鳴れば即ち歯の根も合はず
ガタガタと震える犬のお福やあはれ
*鏡には自己認識を超えた顔この老い耄れを何と定める
8/12
*立ち枯れの布を巻きたる梛の木のミイラに似たる残暑厳しき
*枯れ果てしこの老骨の色もなきをみなを愛する心なんぞも
2007年 平成19年
3/21
*人住まぬ家の桜が庭の奥みで
如月の青空に揺れ目白飛び交ふ
*こんな句に終へる一生彼岸かな